次元を超えたハスラー愛

2020年の夏が終わった。

季節の移り変わりと共に、息子(3歳)のハスラー(スズキの軽自動車)好きは新たなフェーズに突入している。


真夏の炎天下。

近所の公園に出かけようと家を出ても、息子が車道のハスラー探しに熱中し、一向に公園にたどり着かない。

もちろん、見つけるととりあえず追いかける(家族4人で)。


ようやく公園に到着して、都市部では非常に(←ポイント)難しいミンミンゼミの捕獲という偉業をわたしが成し遂げても、息子はほぼ興味を示さない。

車道にちらちら目を向け、ハスラーはじめ様々な車種の名前ばかり連呼し、なんなら虫取り網でハスラーを捕獲する勢いだった。

都市部での捕獲が難しい(強調)ミンミンゼミも、彼の前ではほぼ無価値だった。

鳴き声だけがむなしく響いていた。


そんなある日、息子は私たち両親に難題を突き付けてきた。

「ハスラーの絵を描いて」

∑((((((゚д゚ノ)ノ!!!!!

2次元だ。

文字通り、息子のハスラー愛は次元を超えたのだ。

頼まれると断れない性分の夫とわたしは、写真を参考にして紙にハスラーを描いてみた。

これに息子は大喜び。

「ハスラーの笑った顔も描いて」

「ハスラーが、泣いた後に笑った顔も描いて」

「このハスラー、ちょっと怒ってない?」

要求がどんどんエスカレートしていった。


いや「笑った顔」って何だよ。

いやそもそも「顔」って何だよ。

心の中でつっこみつつ、面白いなあと思った。

息子はやはり、ハスラーの顔が好きなのだ。

そう言われて改めて見ると、確かに目が丸くてとても愛嬌のある表情をしている。

息子の目には、ハスラーに限らず車道にあふれている車すべてに顔があるように映るようだ。


断トツ1位はハスラーだが、「クーパー」も大好き。これも目が丸い。

ハスラーよりもメジャーなのか、保育園の送り迎えの際のクーパーとの遭遇率はかなり高い。

息子より娘(2歳)のほうがこれに夢中で、見掛けるたびに大騒ぎしている。

いつも停まっている駐車場に見当たらないと、「クッパーイナイ」と行方を本気で心配している。


一方、ハスラーやクーパー以外の多くの車は、息子には「怒っている」ように見えるらしい。

例えばホンダのファミリー車「フリード」は、特に「後ろの顔」が怒っているらしい。

目を手で釣り上げて、顔真似もしてくれた。

ただ、息子の話を翻訳すると、フリードは何度かモデルチェンジをしているようで、比較的新しいモデルは怒り方もマイルドとのこと。

私には新旧の違いがまったく分からない。

そもそもフリードが本気で怒っているのかどうかも分からない。


子どもの視点、感性は本当に素晴らしい。

日頃はつい叱りがちだが、本当は生物として大先輩のはずだ。

妹に八つ当たりするなどして、次また強く叱ってしまいそうなときが来たら、

「彼は実は大先輩である」ことを思い出して過剰な叱責を控えるようにしたい。

ちいさな もの書き屋

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